最終更新日 2025年9月8日

はじめに

IT系の資格に挑戦しようと思ったとき、多くの人が最初に目にするのが「ITパスポート」と「基本情報技術者試験」ではないでしょうか。
どちらも有名な国家資格ですが、
名前は似ているけど、何が違うの?
IT未経験の自分はどっちから始めるべき?
と悩んでしまいますよね。

IT未経験の方が最初に挑戦するなら、ITパスポートから始めるのが王道ルートです。
ITパスポートは、ITの専門知識に加えて、現代のビジネスパーソンに必須となる幅広い基礎知識を、無理なく身につけられるように設計されています。
一方の基本情報技術者試験は、より専門性が高く、特に「ITを作る側」、つまりITエンジニアを目指す人にとっての「登竜門」と位置づけられています。
この記事では、「なぜITパスポートが最初の一歩に最適なのか」を、以下の5つの視点から徹底比較して解説していきます。
公式データや合格者の体験談も交えながら解説するので、読み終える頃には「自分はどちらから挑戦すべきか」を自信を持って判断できるようになるはずです。
スポンサーリンク試験の「位置づけ」の違い
本セクションでは、ITパスポートと基本情報技術者試験の試験の位置づけの違いを説明します。
全社会人のための『IT教養』 vs. エンジニアの『登竜門』

両試験の最も根本的な違いは、「対象者」と「目的」にあります。IPA(情報処理推進機構)が定める ITスキル標準(ITSS) という「ものさし」で明確にレベル分けされています。
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ITパスポート(ITSS レベル1)
対象は ITを「利用する」すべての人(社会人・学生)。ITの基礎知識を身につけ、業務にITを安全かつ効果的に活用できることを証明します。
IT業界に限らず、営業・企画・事務など、幅広い職種で役立つ「現代のビジネス教養」といえる資格です。 -
基本情報技術者(ITSS レベル2)
対象は ITを「作る」側の人、つまりITエンジニア志望者。上位者の指導のもとで、システム設計や開発に参加できる基本的な知識・技能を証明する資格です。
まさに、プロのエンジニアを目指す人のための「登竜門」と位置づけられます。

先輩、ITパスポートと基本情報って、どっちもITの国家資格ですよね?正直、名前が似ていて違いがよくわからないんですが…。

良い質問だね! 一言で言うと、ITパスポートは『ITの運転免許』で、基本情報は『自動車整備士の入門資格』みたいなものなんだ。運転免許は誰でも持っていると便利だけど、整備士はプロとして車を扱うための資格だよね。そのくらい目的が違うんだよ。
ITパスポートと基本情報の違い

項目 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
対象者 | ITを利用するすべての人(全社会人・学生) | ITを活用してシステムを作る人(ITエンジニア志望者) |
ITSSレベル | レベル1(エントリーレベル) | レベル2(ミドルレベルへの第一歩) |
一言でいうと | 現代社会のIT教養・リテラシーの証明 | ITエンジニアとしての登竜門 |
数字以上の意味を持つ「レベルの違い」と社会の変化
ITSSでレベル1からレベル2に上がるというのは、単なる知識量の差ではありません。
- レベル1(ITパスポート) 「最低限必要な基礎知識を持っている」ことを証明。
- レベル2(基本情報) 「上位者の指導のもと、要求された作業を担当できる」ことを証明。
つまり、知識を「知っている」段階から、それを使って業務に「参加する」段階へと進む、質的な変化が求められるのです。
さらに近年の統計を見ると、ITパスポートの受験者は金融・保険業や不動産業など、非IT系の社会人が急増しています。
これは、ITパスポートが単なる資格ではなく、デジタル時代を生きる上での「キャリアの保険」として認識されていることの表れです。
試験範囲の違い ビジネスまで網羅する『広さ』 vs. 技術を深掘りする『深さ』
試験の目的が違うため、問われる知識の「幅」と「深さ」も大きく異なります。

ITパスポートの『広さ』
出題範囲は「ストラテジ系(経営戦略・法務)」「マネジメント系(IT管理)」「テクノロジ系(IT技術)」の3分野に分かれています。
驚くべきことに、出題数の約半分はIT以外のビジネス知識です。
これは「ITをビジネスにどう活かすか」という視点を重視しているためです。
一方で、プログラミングやアルゴリズムの深い知識は問われません。
基本情報技術者の『深さ』
同じく3分野から出題されますが、テクノロジ系の比重と難易度が格段に上がるのが特徴です。
最大の違いは 「科目B試験」 の存在。
ここでは「アルゴリズムとプログラミング」に関する問題が約8割を占め、論理的思考力や擬似言語の読解力が必須となります。
まさに「作る側」のスキルが試される試験です。

なるほど。じゃあ、ITパスポートを勉強しておけば、基本情報の勉強も楽になるんですか? 範囲は似ていますよね?

半分は正解かな。ITパスポートで学ぶ用語や基礎知識は、基本情報の『科目A』対策にすごく役立つよ。でも、一番の壁になる『科目B』のプログラミング分野は、ITパスポートでは扱わない。だからそこは新しい挑戦になるんだ。ITパスポートは助走、科目Bは別のハードル、そんなイメージだね。
比較表 出題範囲の特徴
項目 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
主要3分野 | ストラテジ, マネジメント, テクノロジ(共通) | ストラテジ, マネジメント, テクノロジ(共通) |
ビジネス知識の割合 | 高い(約半分が非IT技術分野) | 中程度(テクノロジ系が中心) |
プログラミング / アルゴリズム | 出題されない | 必須(科目Bで重点的に出題) |
知識のレベル | 広く、浅く | IT技術分野を深く掘り下げる |
思考スタイルの違いと「シラバス」の重要性
試験範囲の違いは、求められる思考スタイルの違いにも直結します。
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ITパスポート
経営戦略やマーケティングなどを問うため、
「なぜこの技術が必要なのか」というビジネス文脈での理解力が重要。 -
基本情報(科目B)
問題を論理的な手順に分解し、
「どうやってシステムを動かすか」を考えるシステム的な思考力が中心。
どちらの試験に魅力を感じるかは、将来どのような役割を目指したいかを考えるヒントになるでしょう。
また、両試験の出題範囲(シラバス)はAIやデータサイエンスなど最新の技術動向を反映して定期的に改訂されます。これは「一度合格して終わり」ではなく、ITの世界では継続的な学習が欠かせないことを示しています。
これから学習を始める方は、必ず最新のシラバスに対応した教材を選ぶようにしましょう。
ITパスポートのおすすめ参考書トップ10は以下の記事で紹介しているのでよかったら見てください!
スポンサーリンク難易度の違い データで見る合格率と勉強時間
ここでは、客観的なデータをもとに両試験の難易度を比較します。結論から言うと――基本情報技術者の方が明確に難易度は高いです。

合格率の比較
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ITパスポート
合格率は 約50% で安定。受験者の2人に1人が合格する計算で、
国家試験としては比較的やさしい部類に入ります。 -
基本情報技術者試験
制度変更(CBT化)以降は 40%〜50%前後で推移。
ただしCBT化以前は20%〜30%台が普通でした。
合格率は上がったものの、依然としてITパスポートより難しい傾向があります。
勉強時間の比較(IT未経験者の場合)
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ITパスポート
学習時間の目安は 100〜180時間。
1日2時間の学習であれば、2〜3ヶ月で合格圏内を狙えます。 -
基本情報技術者試験
学習時間の目安は 200時間以上。
ITパスポートの約2倍の学習量が必要で、特にプログラミングの習得に時間を要します。

合格率だけを見ると、最近の基本情報もITパスポートとあまり変わらないように見えますね。それなら、いきなり基本情報から挑戦しても大丈夫でしょうか?

いい視点だね。でもそこに罠があるんだ。合格率は近づいていても、必要な勉強時間は基本情報の方が倍なんだよ。これは問われる知識の『量』と『深さ』が全然違うことを意味している。同じ50%でも、登る山の高さが違う。初心者がいきなり高い山に挑戦すると、途中で挫折するリスクが高いんだ。
比較表 難易度の目安

項目 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
合格率(目安) | 約50% | 約40%〜50% |
勉強時間(初心者) | 100〜180時間 | 200時間以上 |
最大の壁 | 幅広いビジネス用語の暗記 | 科目Bのアルゴリズム・プログラミング |
合格率の数字に惑わされないために
基本情報の合格率が上昇した背景には、試験方式がCBT化されたことがあります。
いつでも受験できるようになり、十分に準備を整えた人が受験するケースが増えたためです。
つまり、試験内容が易しくなったわけではないのです。
本当の難易度を示す指標は、むしろ「必要な勉強時間」の方だと考えるべきでしょう。
さらに合格者の傾向を見ると、興味深い違いがあります。
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ITパスポート
社会人の合格率が学生より高いことが多い。
ビジネス知識の有無が合否に影響していると考えられます。 -
基本情報技術者試験
学生の合格率が社会人より高いこともある。
科目Bで問われる論理的思考力は、日頃から学問としてロジックに触れている学生に有利に働きます。
このように、どちらが自分に向いているかは、社会経験や得意分野を考えるヒントにもなります。
スポンサーリンクあなたはどっち?目的別おすすめ受験プラン
ここまでの比較を踏まえて、あなたの状況や目的に合わせた最適な選択肢を整理しました。

ケース1 IT未経験の学生・社会人 → まずはITパスポート!
ITとビジネスの全体像をバランスよく学べ、成功体験を積みやすいからです。
最初にITパスポートで基礎を固めれば、自信と知識を土台に次のステップ(基本情報)に進むことができ、効率的かつ挫折しにくい王道ルートとなります。
ケース2 将来エンジニアになると決めている → 基本情報技術者に挑戦もアリ!
情報系の学生や、すでにプログラミング学習の経験がある方で「エンジニアになる!」という強い意志があるなら、いきなり基本情報から挑戦するのも一つの選択肢です。
ただし、その分だけ学習時間と覚悟は必須になります。
ケース3 IT業界以外でキャリアアップしたい → ITパスポートが最適!
営業、企画、経理など、どの職種でもITリテラシーは強力な武器になります。
ITパスポートは「ITを理解し、ビジネスに活用できる人材」であることを証明してくれるため、IT業界に限らず幅広いキャリアで活かせます。
合格者体験談 ITパスポートは最高の準備運動

佐藤さん(30歳・文系出身・営業職)
「最初は社内でDXという言葉が飛び交っても、正直チンプンカンプンでした。危機感を覚えて、まずは“ITの入門書を読む”感覚でITパスポートに挑戦したんです。
勉強してみると、IT技術だけでなく会社の経営戦略やマーケティングの話も多く、普段の営業活動に直結する知識ばかりで驚きました。
無事に合格できたことで自信がつき、『もっと深く学びたい』という意欲が湧き、思い切って基本情報にも挑戦。
プログラミングは大変でしたが、ITパスポートで基礎体力をつけていたおかげで乗り越えられ、合格することができました。
今ではエンジニアと対等に話せる営業として、お客様への提案の幅が格段に広がりました。ITパスポートは、私にとってITの世界への恐怖心を取り除いてくれた、最高の準備運動でしたね。」

私は文系出身でITの知識はゼロです。将来的にIT業界で働きたいという気持ちはあるんですが、やっぱりITパスポートから始めるべきでしょうか?

そうだね。まさに君のような人こそ、ITパスポートから始めるべきだよ。いきなり基本情報の分厚い技術書を開くと、専門用語の多さに圧倒されるかもしれない。まずはITパスポートで『ITって面白い!』『自分にもできそう!』という感覚をつかむことが、長い目で見て一番の近道なんだ。
キャリアへのメリット 『ITリテラシー』の証明 vs. 『技術者』としての証明
どちらの資格もキャリアにプラスになりますが、その「効き方」は異なります。

ITパスポートのメリット
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汎用性の高さ
IT業界に限らず、あらゆる企業で「ITの基礎知識がある」ことの証明になります。
就職・転職活動においては、ITへの関心や学習意欲をアピールできる強力な材料となります。 -
業務効率の向上
職場で利用するITツールやシステムへの理解が深まり、エンジニアとのコミュニケーションも円滑になります。
その結果、チーム全体の業務効率アップにもつながります。
基本情報技術者のメリット
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IT業界への強力なパスポート
エンジニア採用において「最低限の技術知識を持つ」ことを客観的に示せる資格です。
特に未経験からエンジニアを目指す場合には、絶大な効果を発揮します。 -
キャリアアップの土台
多くのIT企業で取得が推奨されており、資格手当や昇進の条件になっていることもあります。
また、応用情報技術者や高度情報処理試験へのステップアップにも直結します。
比較表 キャリアへの効き方の違い
項目 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 |
---|---|---|
主なアピールポイント | ITリテラシー、学習意欲 | 体系的なIT基礎技術力 |
効果的な業界 | 全業界 | 主にIT業界・IT部門 |
職務への影響 | コミュニケーション円滑化、業務理解の促進 | エンジニア採用、昇進・昇格 |
次のステップ | 基本情報技術者、MOSなど | 応用情報技術者、専門分野の高度試験 |
キャリアを戦略的に考えるために

ITパスポートの学習範囲に含まれるビジネス知識は、将来エンジニアを目指す人にとっても大きな武器になります。
技術だけでなく「なぜそれを作るのか」というビジネス視点を持つエンジニアは、より価値の高い人材として評価されるでしょう。
つまり、ITパスポートは単に「基本情報の下位資格」ではなく、エンジニアにビジネスの視点を与える補完的な資格でもあるのです。
一方、基本情報技術者試験は特にキャリア初期において強力な力を発揮します。
実務経験のない新人エンジニアを採用する際、企業にとっては「信頼できる客観的なものさし」となります。
200時間以上の努力を乗り越えて合格したという事実そのものが、本人の意欲と基礎能力を雄弁に物語るのです。
両方取得する価値はある?ステップアップのススメ
ITパスポートと基本情報技術者は、「どちらかを選ぶライバル関係」ではなく、連続した学びのステップとして捉えるのが最適です。
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ITパスポート → 基本情報の黄金ルート
未経験者にとって、この順番で学習するのが最も自然で効果的です。
ITパスポートでITの全体像や基礎用語に慣れた後、基本情報で技術的に深掘りしていくことで、学習の負荷を分散でき、モチベーションも維持しやすくなります。 -
基本情報合格者はITパスポートを受ける必要なし
基本情報技術者試験の出題範囲はITパスポートを包含し、さらに深い内容までカバーしています。
そのため、すでに基本情報に合格していれば、改めてITパスポートを受験する意味はほとんどありません。

なるほど!ITパスポートに合格したら、次は基本情報ですね。モチベーションが湧いてきました!

その意気だ! 資格取得はゴールじゃなくて、新しいスタート地点だからね。ITパスポートで得た知識は、必ず次の挑戦で君を助けてくれる。一つずつ着実にステップアップしていこう。

まとめ あなたのITキャリア、最初の一歩を踏み出そう!
最後に、この記事のポイントを整理します。
- IT未経験者やビジネスでITを活かしたい人 → まずはITパスポート 幅広い基礎知識を身につけ、自信をつけるのに最適な試験です。
- 将来エンジニアを目指す人 → 次のステップとして基本情報へ 技術的な基礎力を証明し、就職・転職やキャリアアップに直結します。
いずれを選ぶにしても、大切なのは最初の一歩を踏み出すことです。
この記事が、あなたのITキャリアの素晴らしいスタートを切るための、信頼できる地図となれば幸いです。
「よし、まずITパスポートから始めてみよう!」と思った方は、さっそく勉強の準備を始めましょう。
効率よく合格するためには、自分に合った参考書選びが何よりも重要です。
ぜひおすすめの参考書一覧をチェックして、最高のスタートを切ってくださいね!